夕刊ムシ/ふさわしい名前は何か

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ふさわしい名前は何か

いい愛称があれば愛着が

湧くかもしれない。

そう、あだ名があれば、思わず呼んでみたくなるのかもしれない。
よしこちゃんに、「明日からよっしーって呼ぶね!」と言うと、何だか次の日からわくわくして意味もなく「よっしー」なんて呼んでみて、「用もないのに呼ばないでよォもォ」みたいな楽しいやり取りが生まれたりするわけである。だから。

虫たちの、しっくりくる呼び名を考えようじゃないかという企画なのだ。
どんな虫かわからないときは、記事「錯綜する虫たち」で確認していただける。

ゴキブリのあだ名

そもそも世間で大人気のゴキブリさんにはたくさんのあだ名が付けられているので紹介しよう。

GKBR(ジーケービーアール)

GoKiBuRiのそれぞれの頭文字から。恐ろしい様子を表す「ガクブル(GaKuBuRu)」の頭文字とも一致することから、人々の彼らに対しての畏怖心をうまく表現している。

黒い彗星(くろいすいせい)

ゴキブリの目にも留まらぬ速さを的確に表現した呼び名である。また、彗星という美しさを連想するものと合わせることで、嫌悪感を払拭し、思わず口に出してみたくなる呼び名へと昇華させている。
「昨日うちにゴキブリが出てさあ…」と言うところを「昨日うちに黒い彗星が流れて」と言うと、随分とロマンチックになる。

ホームステイ(ほーむすてい)

共に暮らす同居人として、もはや認めているかのような呼び名。あくまでも家にお邪魔している立場を忘れていないというゴキブリの謙虚さを感じさせ、どこなくいとおしさを生み出す見事な名称である。

アレ(あれ)

もはや名を出さずとも、「昨日家にアレがでた」と言うだけで万人に伝わる、ゴキブリの知名度を利用した呼び名。家にゴキブリが出るというナイーブな問題を、見事にオブラートに包んでしかし的確に伝えることが出来る。 しかし万人に伝わるからこそオブラートに包めていないとの疑惑もあるため、細心の注意を払って使っていただきたい。

ごきにゃん(ごきにゃん)

人気アニメのかわいらしいキャラクターの髪型になぞらえての愛称。キャラクター人気にちなみ、ゴキブリにもその恩恵を授けてやろうと編み出された呼び方である。語尾に「にゃん」と付け加えるだけで、ファンシーキャラクターのようなかわいらしさを馳せることができる。

シロアリのあだ名

なかなかいいイメージが…思い浮かばな…。……。いや。がんばってみよう。

床下の仕事人(ゆかしたのしごとにん)

「縁の下の力持ち」にあやかっての名称であるが、彼らが行うのはもっぱら破壊活動である。しかし「シロアリがわいた」と言うより、「床下の仕事人が熱心で」と話すとよりポジティブで、よりアグレッシブである。

匠(たくみ)

なんということでしょう。華麗なるリフォームの為、家を一度破壊し新たに構築する巧みな巨匠を模した愛称。家の最悪の破壊者には違いないが、「匠」と敬意を込めて呼ぶことで、その悪行も強靭なる家々を無へと帰す超自然的なものへと感じられるのかもしれない。ちなみにこの匠の場合、アフターにはたどり着かない。

灯のフェニックス(ともしびのふぇにっくす)

部屋の明かりに集まり、再三の攻撃(※記事「夜の侵略者」を参照)にも揺るがず、羽を失おうとも己の天命(生殖)を全うする様子を謳ったあだ名。なお、よく電気のケースや傘の中に志半ばで倒れた彼らの亡骸が残ることがあるが、これを「フェニックスは火に還った」と表現するとかなり情緒深いんじゃないだろうか。

カマドウマのあだ名

便所コオロギという不名誉なあだ名のせいで、いっそう嫌われることとなったカマドウマ。ぜひともイメージ改善を図りたい。

キャマドゥマ(きゃまどぅま)

カマドウマという読みが何だか恐ろしい雰囲気を醸し出しているので、インディーな読みに改善した例。まるで何かの神であるかのような名称である。

キープインパクト(きーぷいんぱくと)

かまどに出る馬のような虫、ということから名づけられたカマドウマであるので、有名な競走馬にちなんだ名称。何度見てもなかなかに印象的なその容姿から、インパクトを持ち続ける虫としての栄誉ある呼び名である。また、己の跳躍により壁でまさかの激突死をすることもあるというその生き様に衝撃を受けることにもちなむ。

古の守護者(いにしえのがーでぃあん)

洞穴に行くと大概彼らの集団に出くわすという。洞穴好きの彼らは、古墳も例外ではなく、その住環境に満足をしているようだ。そのことから「古墳虫」と呼ばれることもあると言う。古墳荒らしなどから、聖なる墓を守るべく、彼らはそこに鎮座している。敬意を表し、神々しさを感じる名称として、是非とも推奨する。

ゲジのあだ名

対G戦士であり、人間にほぼ無害でありながら、見た目で嫌われている彼ら。何とかかっこいい名前で人気アップ出来ないか。

験者(げんじゃ)

こちらはゲジの名前の由来で、足が速いことからこう呼ばれており、こちらが訛ってゲジとなったという説があるらしい。……なぜ訛ってしまったのか。かっこいいではないか。験者……。待ち伏せしたりジャンプしたり、運動能力高く獲物を捕まえるらしいが、そんなところもかなり験者という感じがする。

足∞(あしむげんだい)

足の多さと言えば百の足と書くムカデさんがメジャーではあるが、ゲジさんは何といってもその足の絶妙な長さが特徴である。多く長い足という、無限大の可能性を秘めたその脚力に敬いを込めて、そのポテンシャルを表現した。

以上、数種類の虫を抜粋しての提案であったが、いかがであろうか。
明日からはみなさんのお宅でも、黒い彗星が流れるのだろうか。

もしも彼らを発見したときは、一度心の中でもいいので、どれかあだ名を思い浮かべていただけたら、もしかしたらその後の遭遇が楽しみになったり。
する。
のかもしれない。