もしや蜘蛛界でもっとも人に愛される存在なのではないだろうかと思われる蜘蛛、ハエトリグモの仲間・アダンソンハエトリとともに暮らす人はわりといらっしゃるのではないだろうか。
大きさはだいたい成体で1cmくらいで、巣は基本的には張らない徘徊性で、ぴょんぴょんと跳び回る姿が何ともかわいらしいクモである。
Google検索で「アダンソンハエトリ」と入力すると、「アダンソンハエトリ かわいい」と候補が出るほど愛されている面も伺える。
…Gは「ゴキブリ 駆除」なのに。
そもそもアダンソンと言う名前がとても格好良くないだろうか。ハエトリグモの仲間は、名前の「クモ」を省略する決まりがあるそうだが、他にネコハエトリやチャスジハエトリ、アオオビハエトリなどの仲間がいるなか、アダンソンて。なんだか洋風な香りが漂っているじゃあないか。
アダンソンは前面に4つ、頭の上の真ん中辺りに2つ、頭の上の後ろのほうに2の計8つの目を持っている。そのため、後ろから近付こうとしても、すぐに気付いてぴょんぴょんと逃げてしまう。
また、アシダカグモと同じように一部の2ちゃんねラーに深く愛されており、「アダンソンたん」と呼んでいるスレッドもある。アシダカグモとアダンソンの両方に愛を訴えるスレッドも存在している。
砂糖水接待という接待方法があり、アダンソンたんの虜になった人々は皆、麺棒に砂糖水を染み込ませ、アダンソンたんに舐めてもらうことに喜びを感じている。ちなみに、アシダカグモでも砂糖水接待は成功することがあるようだ。
さて、題目の「鷹」の件である。
こちらは江戸時代の一時期にハエトリグモにハエを獲らせる遊びが流行したことに端を発する。翅をやや切って動きを制限したハエを獲物とし、複数のハエトリグモにそれを狩り競わせるというものだった。…ハエがかわいそうだ。
この遊びが鷹狩りの室内版であったことから、ハエトリグモは「座敷鷹」と呼ばれるようになった。ちなみにハエトリグモの漢名は蝿虎だという。かっけー。一時ハムスターをどの小学生も飼っていた時代があったが、一家に一鷹、なんていうのも乙ではないか。
カブトムシの相撲のように、子どもが考えそうな遊びに思えるが、なんとこれは大人の遊びであったという。その為、座敷鷹が娯楽として定着するにつれ蜘蛛を売る商売や蜘蛛を飼い置くための蒔絵を施した高価な印籠型容器まで登場した。強いクモは非常に高価で、当時の江戸の町人の平均的な月収に相当したという。大の大人も虜にする、ハエトリグモのスペックは相当なものである。
もはやアダンソンとて、鷹であり虎であるのである。蜘蛛という概念を捨ててみれば、苦手な方も、少しお近づきになれるのではないだろうか。
ちなみに、上に載せたアダンソンは雄であり、雌は左のような姿である。
ハエトリグモの類は求愛行動がかわいらしかったりするので、そこも人気の秘密かもしれない。雄は雌に近づく時に、獲物と間違われないように、足をタンタンさせて振動を伝え、同じ種であることを主張する。アダンソンたんのタンタンもさぞかわういんじゃないだろうか。
とにもかくにも、某漫画の某戦車のモデルまでも務めたハエトリグモ。
人々を楽しませ魅了して止まない彼らを家で見かけたときは、砂糖水接待してみよう。成功したときのうれしさは半端ないぞ。多分。